ストーリー画像-より良い革、より良い水、そして、月を求めてインドへ
ストーリー画像-より良い革、より良い水、そして、月を求めてインドへ

より良い革、より良い水、そして、月を求めてインドへ

By KEEN Senior Copywriter Molly Elwood

文:KEENシニアコピーライター モリー・エルウッド

KEENが推進するKEEN Environmental Preferred Leather(環境に優しい革)の取材の為、ビデオチームがインドを訪ねると聞いた時、私が真っ先に伝えたのは、ビデオアシスタントとして自分が貢献できるかもしれないということ。そして、荷造りも出発もすぐにできるとも伝えた。

皮なめし工場や水処理施設の見学は、一見すると地味に思えるかもしれない。でも、私たちが毎日、当たり前のように使っているものがどのように作られているのかを見る機会というのは実はあまりないのかもしれない。そして目的地はインド!インドに行くことは、私の小さい頃からの夢だった。憧れの場所に仕事で行けることのみならず、現地の人たちとの出会いを考えただけでワクワクが止まらなかった。

数週間後、私はバックパックと、メモをたっぷり付けたクリップボードと共に、そして期待に胸を膨らませながら、地球の裏側へと向かっていた。


ポートランドからチェンナイへ

ポートランドを出発したのは月曜日の午前5時。空港で空を見上げると上弦の月が大きく浮かんでいた。31時間後(本当に31時間後!)、私たちはインドのチェンナイに降り立った。思っていた通り、空気はじっとりと熱く、タクシーでごった返した光景は、午前2時とはとても思えない。

朝8時からの仕事がスタートするまでのわずかな時間、私はシャワーを浴び、入念に準備したメモに再度目を通した後、倒れ込むように仮眠を取った。疲れ果てていた体とは裏腹にアドレナリンが勝ったのか、目覚ましが鳴る直前に目を覚ましてしまった。「インド!」。カーテンを開けると、昇ってくる太陽がチェンナイの街をピンク色に染め、窓の外ではハトが飛び交い、クラクションが鳴り響いていた。興奮は疲れを一瞬で吹き飛ばした。


目の前に広がる色や音のすべてを、ゆっくりとしたペースで吸収できたことに感謝。想像していたもの全て、そしてそれ以上のものがそこにあった。


インドの伝統的な美味しい朝食を食べたあとは、中国人とインド人の同僚、ビデオグラファー、そして私を含むKEEN Effectチーム全員が2台の車に分乗し、渋滞と格闘しながらベロールへと向かった。ラッシュアワーの真っ只中、チェンナイからベロールへの道は、歩行者、動物、自転車、オートバイ、バス、そして個性的なクラクションを携え鮮やかに塗装された輸送トラックで混雑していた。

目の前に広がる色や音のすべてを、ゆっくりとしたペースで吸収できたことに感謝したいと思う。想像していたもの全て、そしてそれ以上のものがそこにあった。窓を開けて写真をひたすら撮り続けている私たちを見たインド人の同僚は、ココナッツスタンドにも立ち寄ってくれ、目の前の風景に興奮が止まない私たちをさらに楽しませてくれた。最高の時間だった。


「ベターレザー」(より良い革)とは?

さて、私たちが何の目的を持ってインドの地に降り立ったのかを説明したいと思う。インドでは、長きに渡りなめしビジネスが行われており、牛の皮はアメリカを含む世界各地から取り寄せている。しかし、なめし加工の工程は残念ながら汚染を伴うプロセスである。皮を柔らかくして使いやすいレザーに変えるには、大量の水と化学薬品が必要なのである。KEENが常に目指すデトックスの旅を続ける中で、私たちは、Leather Working Group(LWG)による認証を取得したなめし工場(LWG認証タンナー)からのみレザーを調達するように移行していった。LWG認証タンナーは、信頼できるレザーの判断基準である。インドでも取り入れられている完全な閉ループ構造もその一つであり、水やエネルギーの使用量を減らし、また、排水汚染を削減する水処理液剤を使用している。

この旅では、その工程を実際に見に行ってきた。


1日目:水を見る

ラニテック水処理施設に到着したのはお昼頃。まずは上層部の人達と昼食を取り、その後に、見学ツアーが始まった。(余談だけど、その時、シェアするものとして用意されていた料理の一つを、勘違いして全て一人で食べてしまったの。)

ラニテックは、白とクリーム色の建物がパイプで結ばれ、白いフェンスで囲まれた施設だった。花木や庭園、噴水が点在し、フェンスで囲まれた小さな庭にはアヒルまでいた。(なぜアヒルがいるのかを聞いてみたら、そこで働く人たちの癒しになっているそう。)要するに、想像していたような場所とは全然違うのである。でも、臭いについては...予想通りだった。臭いはどうやってもカモフラージュすることができなく、やはり水処理施設の臭いがした。

私たちは、まず、なめし工場から流れ入る水の部分から出発し、閉ループ構造の順に合わせて追ってみた。物理的にバイオソリッドを分離する機械、茶色く泡立った水が流れるオープンタンク、そして巨大な沈殿池という感じである。

ラボを見学し、逆浸透と脱塩処理についての仕組みをさながら科学の授業のように教えてもらった。とても専門的で高度な内容であったが、水から化学物質をしっかりと分離し、その両方を最終的になめし工場に戻していることを確認することができた。きちんと処理された水は、なんと、飲めるほど綺麗な水だそう。(KEEN Effectチームも実際に飲んでみて「うん、綺麗!さすがだ!」との感想)。この過程を経て、副産物として残るのはなんと塩だけである。


ベロールに浮かぶ月

ちょうど日が沈む頃にその日の撮影が終わったが、インドに到着してからまだ24時間も経過していないことが信じられなかった。ホテルへ向かう前に、同僚たちがジャラカンズウォーラー寺院とベロール・フォートへ案内してくれた。公園や通りには人が溢れ、しまいには車を停めて徒歩で行かなければならないほどの賑わいだった。

「何かあるのかしら?今日は祝日?何かイベントでもやっているのかしら?」と同僚に聞いてみた。

同僚は笑顔で「いやいや。いつも通りだよ。いつもの火曜日だよ」と答えた。

寺院の麓に立つと、目の前の音、色、景色がいっぺんに私を包み込んだ。その全てはあまりに鮮やかで一瞬ふらついてしまうほどだった。涼しさを楽しむ家族連れ、カラフルなサリーを着た女性たち、お互いの肩に腕を回す男性たち、鳩が飛び交い、月明かりの下で音楽が流れ、遠くでトラックのクラクションが陽気に鳴り響いていた。

たくさんの刺激、たくさんの人、そこにある全て。それはいつもここインドにある、いつもの火曜日の日常だった。

「時差ぼけのせいね。」同僚にはそう言って、嬉し涙を手で拭い隠した。


2日目:レザー、青色からフィニッシュまで

翌日も伝統的な朝食を堪能し、その後、ラニテックの水を使用しているなめし工場に車を走らせた。なめし工場がどのような見た目や造りをしているのかという知識がない上に、牛の皮を扱っているということで正直少し緊張していた。しかし、オープンドアの工場は空からの明るい光がよく入り、ファンが回り、とても明るく風通しの良い場所だった。そして、到着した皮を見ると、驚くことに青色だった。

「塩漬けしてあるから青いんだよ。」と同僚が説明してくれた。「海外に輸送するためにね。」とも。

皮は洗浄され、化学物質を除去したり加えたり、柔らかくしたり、染料を加えたりする為に多くの機械に通されるが、巨大なドラム缶状の洗浄機の操作、洗浄機に液体等を流し込む作業、すすぎ、滑らか且つ平らにプレス、吊り下げて乾燥させる作業など、一連の工程の様々な段階での作業を一人または二人一組で行っていた。そのプロセスで使われる全ての水も薬品も、すべて再利用できるように、流れ出ることはなく処理されていたのである。


アンブールにかかる月

その夜、私たちはアンブールのなめし工場に併設される近未来的な雰囲気のゲストハウスに宿泊した。同僚たち、私たちの靴を生産する工場の一つのオーナーと一緒に、パティオで語り合った。よく冷えたビールを飲みながら、インドやアメリカ、そして人生について語り合ったあと、家に電話を掛けようと思い庭に立つと、夜空を照らす月明かりに気がついた。インドに着いてから3度目の月が頭上に満々と輝いていた。三日続けてこの月を見ることができたことに不思議な気持ちが込み上げた。それとも二晩だろうか?ポートランドを発ってから、どれくらいの時間が経ったのかがわからなくなっていた。


3日目:手仕事でつくる靴

最終日には、私たちの靴を製造している工場を見学させてもらった。カメラを片手に。私は広告の仕事が専門なので、恥ずかしながら、実際にどのようなプロセスで靴が作られているのかを深く考えたことは今までなかった。皆さんも、靴の広告に「ハンドメイド」と書いてあるのを見かけることがよくあると思う。実は、すべての靴はハンドメイド(手作り)なのである。手作業で部品を切り、穴を開け、糊付けする。一つの靴の材料となるそれら全ての部品を1つの箱にまとめる。そして、それらを手作業でパズルのように縫い合わせていき一つの靴が出来上がる。そのすべてが人による手作業で行われているのだ。

工場見学を終えた後は、アジアの他の工場見学を続ける組と、帰国する組と二組に分かれることになっていた。帰国組が空港に向かう前に、インド人の同僚がベロールの黄金寺院に連れて行ってくれた。寺院では靴を脱ぎ、携帯電話はしっかりと閉じた袋にしまわなければならない。そのおかげで、見るものすべてを写真に収めるということから離れ、ただただインドにいることをエンジョイすることができた。瞑想的な気分に浸りながら、星形の道を1マイルほど歩いただろうか。とても心地良い時間を過ごすことができた。

もうすぐこの旅が終わろうとしているなんて信じられないという気持ちと共に、まだもう1日あるという嬉しさが込み上げてきて、明日は何をしようかと考えるだけで胸が高鳴った。


最後の月

最終日の朝は、近くのカフェに行き、人や車の往来を眺めながら一日をスタートした。朝食を食べながら語らう人々、土曜日の朝をのんびりと過ごす人々。一台のバイクをシェアする二人の警察官。人々の食べ残しやごみを食べる鳥たち。痩せた牛がどこにいくのかを見守った。極度の貧困も見た。インドの強い日差しで日焼けもした。

インドには避けることができない貧困問題がある。ジェンダー問題も同様で、ここではその話に触れたいと思う。文化的なことを勉強する必要はもちろんあるが、37.8℃の気候の中でも長袖を着るというような話ではなく、イスラム圏で上層部の中に交じって話をしていた時も女性は自分一人だけであったことや、寺院では別の入り口から入る必要があったこと、「その方が安全だから」という理由で唯一バルコニーのない部屋を与えられたりしたことは、また別の話なのだ。正直な気持ちを話すと、すべての女性を代表して、私は憤りを感じざるを得なかった。安全を感じ、自分の旅は自分でコントロールしたい気持ちがあった。世界中の女性問題に対して血が騒いだ。正直なところ、アメリカで自分がどれだけ恵まれているかをよく考えたこともなかったことにも気づかされた。

同僚からは、チェンナイで過ごす1日はきちんとガイドを雇った方が良い、自分一人でぶらぶらするのはやめた方がいいと言われた。その提案には、ためらいもあったが、会社の出張であることを考えて、受け入れることにした。昼食後、長身でホテルの制服を着用した、正に公認ガイドといった雰囲気のラジと会った。ガイドのラジはお土産を買いに連れて行ってくれ、それから私が予約しておいたガイド付きカルチャーツアーに送ってくれた(Story Trailsのツアーは本当におすすめ!)。

その後、ラジが迎えに来て、いくつかオススメの場所を教えてくれた。その中の一つ、エリオット・ビーチに行くことにした。空を見上げると、そこにはまた満月があった。今夜はベンガル湾の上に浮かぶ満月だった。

こんなに続いて毎晩のように、月に気づいたことは今までにあっただろうか。

ベロールの寺院の夜と同じように、ビーチは夜風を楽しむ家族連れで賑わっていた。屋台が並び、カーニバル的なゲームもあった。私たちは塩マンゴーを分け合い、輪投げを楽しんだ(セラミックでできた寺院の小さな置き物をゲットしたのよ)。冗談抜きで、理想的なお見合いデートをしているみたいだったわ。ラジは自分の人生、家、結婚、そして2015年にチェンナイを襲った洪水について話してくれた。私はラジに文化的な質問をしたり、自分のアメリカでの生活について話したりした。ラジは、私が西洋人の女性として当然だと思っていたこと、例えば自分の家を持っていることや時にはテキーラを飲んで楽しむこと、一人旅をすることなどに驚きの声を上げていた。

ラジは、閉館間際のアッシュタラクシュミ寺院にも連れて行ってくれた。寺院の中で、灰をかぶった男性から水をかけてもらい祝福を受けられるように(と思う)、ラジは私を大勢の人の前に押し出してくれた。そして、本当に祝福された気持ちになった。

そして、時差の関係もあり、次の日の夕食までには家に帰っているという事実に気づきハッとし、またインドに戻ってこれる日がいつ来るかわからないことにも気づいたのだ。それがいつの日であっても、遠くない未来であることを願う。


靴ができるまでには、何百もの選択肢があります。一つ一つの工程で私たちが環境に与える負荷や影響を軽減するチャンスがあると考えています。私たちが「Consciously Created(配慮を持ってつくられた)」と表現する理由。より良い地球のためにより良い靴をつくる。そのために取り組んでいる様々なステップについて、もっと詳しく知ってください。

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