【FOCUS MODEL】 PITTSBURGH ENERGY 6" WP
“表現者×自伐型林業"というライフスタイルで
遊びも仕事も境界線のない日々にKEEN UTILITY
自然の楽しさと厳しさ。そのどちらも知るアスリートが、自らを表現する舞台となる自然を、自分たちの手で守りたいと思う。それはとても必然的な動機だが、言うは易く行うは難し。それでもそのミッションに挑む者たちが、いつの時代にも現れるものだ。
今回紹介するDIVERSE LINES CLUB(以下、ディバースライン)は、"自伐型林業"というスタイルで、100年後の森をイメージした持続可能な森づくりに取り組んでいる。
代表の天野紗智さんは、秋田県で生まれ、幼少期から雪山に通ってスキーをしていた自然育ち。その後の人生を共にするスノーボードと出会ったのは10代の終わりで、そのときに天野さんは、それまでの人生には縁のなかった「表現」のカッコ良さに胸を打たれる。
「スノーボードを初めて経験したのは、19歳のとき。それまでは小学校から大学までバスケットボールを本気でやっていて、インターハイ、国体、インカレ、オールジャパンなどに出場しました。そうやって人と競い合うスポーツをしてきた自分がスノーボードと出会ったときに、勝ち負けだけではないスタイルを表現するカッコ良さに惹かれて、自分も表現をする人生を送りたいと思うようになったんです」
天野さんはスノーボードを始めてまもなく、カナダのウィスラーを訪れ、日本とはスケールの異なるビッグマウンテンを舞台にした、世界レベルのスノーボードに衝撃を受ける。その後、東京で働くようになってからも、プライベートの時間とお金はほぼすべてスノーボードに費やす日々。大会などに参加して成績を残しつつ、作品などを通して自分のスタイルを追求していく天野さんは、いつしかスポンサーがつくプレイヤーへと成長した。
しかし、そのときの天野さんが直面したのは、スノーボードだけでは生計が立てられないという現実と、自然と向き合う中で感じざるをえない環境の変化だった。
「多くのスノーボーダーは、夏場に資金を貯めて冬にスノーボードをするというサイクルで活動しています。けれども自分は、『どうすれば自然の中で、遊びも仕事も境界線のない生活ができるのか』ということを考えていました。同時に、小さなころから自然の中で遊んでいて、大人になってもスノーボードを通して毎日のように自然と向き合う中で、シンプルに雪が少なくなっていることも含め、環境の変化を敏感に感じていました」
天野さんはそのような想いから、2017年に長野県小諸市へ移住し、自らが理想とする生活を送れるフィールドを模索した。その過程の中で自らの知り合いを通じて知ったのが、天野さんのその後の人生を変えることになる“自伐型林業”。個人または少人数のグループで伐採や搬出を行う持続可能な林業──それを知り、天野さんの未来に一筋の光明が差した。
「スノーボードの活動と兼業できる自伐型林業の存在を知り、まずは一から林業の研修を受けました。その後、仲間たちと2018年にディバースラインを立ち上げましたが、当時は“自伐型林業”がまだ全然知られていなかったですし、自分たちの山林を持っているわけでも、重機を持っているわけでもなかった。まずは地元の農家のお手伝いや掛け持ちでアルバイトなどもしながら、地域の方たちに自分たちの想いを伝えるところから始めました。するとあるとき、同じ地域の農家の方から所有する山を紹介してもらえることになり、さらに国の助成金なども申請して、なんとか自伐型林業をスタートできたんです」
自伐型林業を通して、持続可能な森づくりに貢献する──環境保全に繋がるアクションはディバースラインの活動の大きなテーマではあるが、ただ単に環境のためだけのアクションというわけではない。ディバースラインおよび天野さんがもうひとつ大事にしているテーマこそが、多様なライフスタイルを構築することによる、ワークライフバランスの実現だ。
「ディバースラインを立ち上げてすぐのころに、スノーボードと自然の関係にもっと向き合うために、カナダで1年間を過ごしました。そのときに、遊びも暮らしも仕事も自然と共にある環境の心地良さを知って、ますます日本に帰ってからもそういうライフスタイルでいたいと思うようになりました。自分たちのライフスタイルが環境のためになるとか、地域に貢献できるという流れが作れれば最高だなって。私の場合、ライフスタイルの中に大好きなスノーボードがあり、大好きな自然を守る自伐型林業があるんです」
ディバースラインの活動は、文字通りゼロからのスタート。その活動をひとりでも多くの方に知ってもらうためのアクションを起こすにあたって、天野さんは「スノーボードでスポンサーを見つけるときにやっていたことが、ディバースラインでも活きた」と語る。
「まずは『こうなりたいから、こういう活動をしている』ということをしっかりと説明するために、自分たちからアプローチをする。実は、KEEN UTILITYとの出会いも同じだったんです。自伐型林業を知らない方にも私たちの活動を広めるためには、違うジャンルから発信をしてもらうことによって、より多くの方にメッセージが届く。そう考えて、KEEN UTILITYが日本に進出してすぐのときに、こちらからアプローチしました」
「これまでのいわゆる安全靴と呼ばれるシューズはすごく重かったり、中に水が染みてきたりしていましたが、KEEN UTILITYはそういったことがない。林業では雪が降ったあとに溶けて道がぐちゃぐちゃになることもありますが、そういうときでも全然滑らないですし、今まで履いたワークブーツやワークシューズの中では最高だと感じています」
そういったKEEN UTILITYの機能面だけではなく、デザイン面、シンプルに言うと従来の安全靴とは一線を画する“カッコ良さ”も、天野さんにとって重要な要素だった。
「林業ってクローズドな業界のイメージがまだまだありますが、私たちはスノーボードで自分たちのスタイルを表現しているように、林業でも自分たちを表現したい。そういうときにやっぱり、シューズを含めて身につけるものっていうのはすごく大事。KEEN UTILITYを履くことで、林業というものをカッコ良く発信できるのはうれしいですね」
そしてKEEN UTILITYとディバースラインは、「持続可能」という点においても強く共鳴している。事実、天野さんが最初にサポートしてもらったというKEEN UTILITYのシューズは、約3年経った今でもタフさをキープしたまま、現役で活躍しているという。
スノーボードも林業も、好きなことに繋げたい。
改めて今、その純粋な気持ちが、天野さんの原動力。
「今後は林業で出た木を使ってスノーボードの板を作ったり、自分たちで作ったフィールドでイベントを開催したりもしたい。自伐型林業が好きなスノーボードや自然の遊びに繋がるような活用の仕方をしたいというのが目標であり、モチベーションになっています」
環境保全や持続可能な森づくりを、自分たちにとって心地良いワークライフバランスの上に成立させようと試みるディバースラインの活動は、多くのアスリートやアーティストにとって指針となるだろう。そして"表現者×自伐型林業"というライフスタイルで、遊びも仕事も境界線のない日々を送る天野さんは、誰よりもKEEN UTILITYがよく似合う。
Cascade Brown/Greener Pastures
Black/Forged Iron