ストーリー画像-今こそ、人種差別を解消し、強いコミュニティ作りに力を。
ストーリー画像-今こそ、人種差別を解消し、強いコミュニティ作りに力を。

今こそ、人種差別を解消し、強いコミュニティ作りに力を。

2020年5月。アメリカで起こったジョージ・フロイド氏の不幸な事件に端を発し、『Black Lives Matter』を掲げた抗議活動が世界中に広がりました。KEENは「私たち一人一人が変われば、世界は変わる」という考えのもと、苦しんでいるコミュニティに耳を傾け、学び、多様性を認め合い、支えあえる世界に近づけるよう努力を続ける事を再確認しました。より理解を深めようとKEENのスタッフ同士でも学びのコミュニティが作られるなど、小さな一歩ではありますが、一人一人が変わろうと努力を続けています。

今日は、KEEN USで6月に掲載されたブログをご紹介します。
<ここから、KEEN USのブログより翻訳>

今日は、フライフィッシングを通じて若者や退役軍人とアウトドアを繋ぐ活動を行う「Soul River Inc.」の創始者、チャド・ブラウン氏にお話を伺います。

KEENとチャド氏の出会いは、KEENが映画「Wild Owyhee」シリーズを制作していた三年前。それ以来、KEENの助成金プログラムや、退役軍人の日のセール収益の全額の寄付などを通じて、彼の活動をサポートしています。

アウトドアでさまざまな制度的人種差別※を体験してきた彼の話はショッキングです。でも、より多くの人に知られるべき事実でもあるのです。


(※訳注)
制度的人種差別とは、社会構造そのものに 社会的弱者が不利になる仕組みが組み込まれていて、マイノリティとして生まれただけで不利の連鎖となり、個人の自助努力では克服しがたい構造的な差別のことです。

250年前まであった奴隷制に由来するレイシズムをもとに、経済、政治、教育などあらゆる分野に黒人差別が根強く残り、これによって、教育の機会、就職の機会など社会生活のベーシックな権利が大きく阻害されていると言われています。


私たちの心にある愛が、未来を変える

「フロイド氏の死は、警察だけでなく、私たちが暮らす社会そのものに存在するsystemic racism=「制度的人種差別」を浮き彫りにしました」とチャド氏は語ります。

「アメリカで黒人であるということは、“標的”として生きるということです。外に出るたびに差別的な呼び方をされ、店やオフィスでは、犯罪の濡れ衣を着せられ、近所にいるというだけで交通規制の対象になり、警官から嫌がらせを受けるのです。一度、警官に車を止められた時、運転免許証に退役軍人と明記されているにも関わらず、アメリカ市民かどうか尋問されたことがあります。フライフィッシング中に車のタイヤが切られたり、“退役軍人の日”に釣りをしていてブレーキケーブルが引きちぎられたこともありました」。


“私たちは誰もがアウトドアが大好きだし、アメリカ市民として存分に自然を楽しむ権利があります。しかし私は、白人のように自由に自然を楽しむことができません。”


「私は、SNS上で 『フライフィッシングを白人から奪っている』 と非難されたこともあります。フライフィッシングは白人のスポーツで黒人のものではない、と言うわけです。脅迫電話を受けたこともあります」とチャド氏は続けます。

「誰もがアウトドアが大好きだし、アメリカ市民として存分に自然を楽しむ権利があります。しかし私は、白人のように自由に自然を楽しむことができません。一人でアウトドアにいるとき、身の安全を心配することなく自然を楽しむことがどれだけ難しいか…。

ジョージ・フロイド氏は公の場でリンチされました 。こうした事件は、実はこれまでも繰り返されていて、黒人の日常に組み込まれています。黒人なら誰にでも起こり得ることです。私はもちろんのこと、どんな黒人男性でもジョージ・フロイドになる可能性があるのです。この現実に私は怒りでいっぱいになり、悲しみ傷ついています。


しかし、これが私たちの現実なのです。

海軍にいた時、私はクウェート、ソマリア、キューバで勤務しました。防弾チョッキを着て、常に銃をそばに置いておく生活でしたが、美しい森を訪れるときも、戦場にいた時のように防弾チョッキを着こみ、武器を握りしめていなければならないのです。黒人であることで、自由や癒しを求めて川に入るときでさえ、自分の身を守らなければならないのです。

アウトドア業界の中にも、制度的人種差別が根強くあります。白人以外のアウトドアの専門家はたくさんいるにもかかわらず、メディアはあまり取り上げず、アウトドア企業や自然保護団体もこのことを見過ごしています。

有色人種の人々は、時々パネルディスカッションに招かれたり、ブログで言及されたりする以外、活動に招かれることはほとんどありません。有色人種や黒人を参加させるのは、“政治的に正しい” というチェック項目に『✔︎』を入れる目的に過ぎないことが多いのです。しかし、アウトドア・レクリエーションや政策立案、自然保護に関わるときは、先住民族のコミュニティや有色人種の人々の声に耳を傾ける必要があるはずです」。


今こそ、人種差別を解消し、将来を担う若者を支える
強いコミュニティ作りに力を注ぐべき時です


「ジョージ・フロイド氏の死は、なぜこんなことが起きるのかを真剣に見つめる機会を与えてくれました。これは人々が信頼関係を築き、新しい友人を作り、お互いから学び合い、より良く安全なコミュニティを構築するよい機会となります。今は、人種差別を解消し、将来を担う若者を支える強いコミュニティ作りに力を注ぐべき時なのです。

私たちは今、古い世界の遺物を目の当たりにしています。人種差別は、私たちの国を生んだ基盤であり、決して私たちの元を去ってはいません。いつになったら、何世代にも渡るこの負のサイクルを壊せるのか?いつですか?私たちはみんな人間です。しかし私たちが全ての人種を人として受け入れた時にのみ、私たちは “みんな” になれるのです。

残念ながら今はそうじゃない。今、黒人は分断されています。今、黒人は殺されていて、この国のどこにも正義はありません。

白人にはこの流れに参加しない選択肢があり、正義のために戦わなくてもいいという特権があります。一方でその特権を使い、より強いコミュニティに働きかけ、全人類をひとつにするという選択肢もあります。

私たちの国は機能不全に陥っています。指導者たちは国をリードするかわりに、分裂させることに熱心で、多様な人種やジェンダーの声を聞こうとしません。

私たちは闇に直面しています。唯一の光は、私たちの心にある愛です。互いへの愛はどこにあるのでしょう?憎しみによって前方を指差し、力をみなぎらせるのは簡単です。しかし愛は、より深い強さと成熟をもたらしてくれます。

長い間に渡って確立されてきたシステムを解体し、今日に合った形に再構築しなければなりません。昨日は、もういらないのです。」


BLACK LIVES MATTER.