私たちが「平和」のためにできる5つのこと
私たちが「平和」のためにできる5つのこと

私たちが「平和」のためにできる5つのこと

9月初旬。KEENもウクライナ支援をきっかけにサポートすることとのなった国際NGO AAR Japan[難民を助ける会]の平出唯さんによる活動報告会がKEEN社員向けに行われました。報道から見えてこない難民となってしまった人びとが直面している困難やニーズ、そして真の平和とはなんなのか、ウクライナ難民支援を1年間隣国モルドバで務めた平出さんと一緒に考えました。

日本でもっとも歴史のあるNGOの一つ、AAR

平出さんが所属するAARは、1979年に相馬雪香氏によって創設されたNGOで、日本で最も歴史あるNGOの一つです。インドシナ難民支援から始まり、現在では難民支援以外にも幅広い分野で活動し、65の国と地域で支援活動を展開。ウクライナ緊急支援活動は、2022年3月より行っています。

AARの活動分野と活動地マップAARの活動分野と活動地


まずお聞きしたいのですが、どうしてこの国際支援のお仕事に辿り着いたのですか?


― 平出さん
「学生の頃は英語や海外への興味が強く、高校二年生の時にアメリカ・メーン州へ留学した際に通っていた学校に難民としてアメリカに移住していた同級生がいたことから「難民」や「難民が生まれる背景」に関心を持ち始めました。その後帰国し、大学では国際政治学を学びながら国際平和教育プログラムのボランティアに参加するなどの活動していました。

そんなこともあり就職先はNGOを志ていましたが、新卒として入るには実はNGOはハードルが高いんです。なので、一般企業を経てAARに入社しました。一般企業で在職中に海外ブランドのオンラインショップの立ち上げやSNSマーケティングに携っていたのですが、AARでもWEBマーケティングに力を入れていきたいとのことだったので、「これまでの経験値が活かせるのでは」と思って応募したのがきっかけでした。」

ということは、まずはPR担当で入職されたのですか?

― 平出さん
「そうなんです。でもその後事業部に配属になって、モルドバ赴任となったんです。モルドバはウクライナと国境を共にする隣国なのですが、ウクライナから国境を越えて違う国に出れば、そこにはミサイルは飛んできません。そういう意味で直接的にウクライナ危機を感じることはありませんが、代わりに間接的に感じることはありました。例えば、ウクライナで爆発が起きたりするとモルドバでも停電が起きます。その時は「ミサイルが落ちたみたいだね」とか「計画停電かな」と話し合ったりするのですが、情勢が不安定になっている時は特に戦争が近くにあることをリアルに感じました」

現在のウクライナからの難民となった人びとはどのくらいになるのでしょうか?

― 平出さん
「ウクライナ危機によって、2023年4月現在、810万人以上が「難民」としてヨーロッパを含む国外に出ており、推定530万人がウクライナ国内で避難しています。みなさんが「難民」と聞いて思い浮かべる人たちは、自国から出ている方たちですが、一方自国に留まりながらも避難生活を送っている「国内避難民」も非常に多くいらっしゃいます。

AARが提供した車両で小学校に登校する国内避難民の子どもたちAARが提供した車両で小学校に登校する国内避難民の子どもたち


今はウクライナ危機にフォーカスが集まっていますが、実は全世界に1億人以上の難民が存在すると言われているんですよ。この数は、世界の74人に1人に相当するといいます。私たちの活動は、こういった全世界の難民や困難な立場にある方への支援事業となるのですが、その活動は多岐にわたります。食料や生活必需品の配布、家電の支援、子どもたちへの遊び場整備などが代表的な活動です。これらの活動はKEENさんがしてくださったように、企業や個人の皆様からの寄付金によって支えられています。この場をお借りして、皆様にお礼をお伝えしたいです。」


不安と絶望。難民になった人びとが抱える困難

ウクライナ難民の女性に食事を手渡す平出さんウクライナ難民の女性に食事を手渡す平出さん (c)Yoshifumi Kawabata


ウクライナ危機について、戦況や政治的な動きについては日本でも比較的報道がされている印象ですが、難民の方たちの様子までは取り上げられていない感じがします。実際に難民の方はどんな生活をされていて、どんな思いをお持ちなのでしょうか?

― 平出さん
「ウクライナ難民に限らず世界中の難民・避難民の方々は多様な困難に直面しています。ウクライナ避難民が直面する課題と、それに対応する支援は下記のようなものがあげられます。

1. 経済的支援
戦争により仕事を失い、生計が困難になり、食料や基本的な必需品にすら困っている人々が少なくありません。多くの人々は貯金を切り崩したり、国連や受け入れ国の支援で何とか生活しています。経済的に困窮すると自身の身体や心の安全を犠牲にする方も出てきてしまうため、特に緊急期は経済的な支援や食料や生活必需品の配布といった支援が必要です。

2. 精神的支援
戦争の恐怖や不安、家族と離れ離れになった悲しみ。精神的な負担は計り知れません。国境を超えて身の安全は確保されても、心は祖国にあり遠く離れた家族の安全を常に心配されています。また、避難先で幸せを感じることがあっても、置いてきた家族を想って罪悪感に襲われてしまう方も多くいます。金銭的・物的な支援だけでなく心のケアが不可欠です。

3. 語学
ウクライナ危機に置いては、モルドバのような旧ソ連国に避難している場合には、ロシア語を共通言語とできるケースが多いため、言語が大きな障壁とならず生活できている方もいます。しかしそれ以外の国々に避難している方々は、避難先の言葉を習得することに苦労します。日常生活を送るため、そして安定的な仕事に就くための語学サポートが必要です。

4. 就労
「難民は受け入れ国にとって負担になる」と考えられる方も一定数いるかと思いますが、難民のほとんどは仕事をして家族を支えたい、そして、受け入れ国の社会の一員として税金を納め貢献したいと思っています。しかし、言葉の壁や必要となる資格などの違いから仕事を見つけることは容易ではありません。一人ひとりの強みを生かして受け入れ国で社会の一員として貢献してもらうためには就労支援が重要です。

5. 医療
戦争や過酷な状況に置かれるストレスや不安などから持病が悪化する方も多く、健康問題も深刻です。金銭的な理由や言葉の壁が原因で適切な医療サービスへのアクセスできないことも多いため、サポートが必要です。

これら以外にも、たくさんの課題と支援の方法があります。「難民」というのは状況を表す言葉で、一律の属性ではないので、一人ひとりの元々の経済的・社会的背景によって置かれる状況も異なります。しかし、どなたも共通して望まれているのは「戦争が終わり平和が戻ること」「祖国に帰り家族と再会すること」です。その想いを前に我々のような支援団体ができることは、当たり前ではありますが、本当に限られていると感じます。
しかし、上記のような課題についてサポートをすることで少しでも困難な状況を改善できればと願います。そして、これらの活動を続けるためにも、どうかこれからも興味を持ち続け、信頼できる支援団体に協力していただければと思います。」


平和とは未来を思い描けること

AARが大学寮に開設した子ども用スペースで遊ぶサーシャくんAARが大学寮に開設した子ども用スペースで遊ぶサーシャくん


現地で難民の方への支援を実際にされる中で、ずばり「平和」とは何だと思いますか?

― 平出さん
「難しい質問ですよね。平和学の父と言われるヨハン・ガルトゥングによると、平和は大きく2つの定義に分けられ、消極的平和と積極的平和があります。

・消極的平和: 戦争や紛争などの「直接的暴力」がない状態
・積極的平和: 貧困、抑圧、差別などの「構造的暴力」がない状態

またガルトゥングは、平和の対義語を「戦争」ではなく「暴力」とし、平和を「暴力の不在」と定義しました。また、直接的暴力や構造的暴力を支える「文化的暴力」という概念も提唱しました。
「平和」に相対する3つの「暴力」
・直接的暴力: 紛争、虐殺、家庭内暴力など
・構造的暴力: 貧困、飢餓、環境問題、差別、疎外、搾取など
・文化的暴力: 他者への不寛容、偏見、憎悪、無関心など

ウクライナ難民の方はウクライナを出て隣国に辿り着いた時点で、例えばミサイルが落ちてくるような直接的暴力の心配はなくなります。それでも、心が平和であるかと言われると残念ながらそうではありません。現地で難民の方の話を直接聞く中で私が感じた「平和」には、以下の点があります。

・安全な帰る場所、故郷があること
・家族や大切な人と一緒にいられること、離れていても安全だと信じて過ごせること
・自分の未来について計画をたてられること

実際に、戦地からは抜け出しても、離れ離れになってしまった家族と連絡がとれなくて不安を抱えてしまう人、将来が見えないことで精神的にも辛い思いをされている人がたくさんいます。未来を描けること、そして心の平穏を持てる状態が「平和」だと痛感しています。」


私たちが「平和」のためにできること

私たち一人一人が、難民の方が「平和」を得られるためにできることはありますか?

― 平出さん
「はい、以下に5つ挙げます。

1. 興味を持つこと
世界の難民の状況についてまずは興味を持って、知って欲しいです。また、報道がなくなっても支援を必要としている人々はいなくなった訳ではありません。逆に状況が長引き悪化しているケースも少なくありません。関心を持ち、そして持ち続けて欲しいと思います。

2. 周りに伝えること
SNSなどを使って、簡単に周りの友人や世界中の人々に誰もが情報発信ができる時代です。自分が興味を持った問題について共有することで、社会の意識の変化を作ることにも繋がります。

3. 分かりやすいストーリーを疑う
”分かりやすいストーリー”に対して「本当にそうなのか?」というクリティカルな視点を持つことも大事です。例えばウクライナ危機については、もちろん主権国家を侵攻したロシアが非難されるべきです。ただ「プーチンは悪だ」「ウクライナ頑張れ!」と簡単に片方を応援して良いのでしょうか。何も知らずに戦場に送られるロシア兵とその家族のことを思うと、私は難しいと思います。
また、ウクライナ危機が起きて「世界に平和を」と願う私たちは、例えばイラク戦争が起きた時も同じように関心を持ち、戦争に反対することができていたでしょうか。私たち一人ひとりがメディアの言う通りに考えるのではなく、分かりやすいストーリーを疑い、より深く知ろうとすることが大切だと感じます。

4. ボランティア活動・チャリティグッズやイベントへの参加
信頼できると思う団体のボランティア活動やイベントに参加してみてください。NGOや支援プログラムに関する情報を調べ、どの方法が自分に合っているかを検討してみるのもいいでしょう。ウクライナ難民やアフガニスタン難民など支援を必要とする人が意外と近くにいるかも知れません。

5. 募金や家にあるもので支援
支援活動は皆さまの多くの募金で成り立っています。100円単位で金額を選ぶこともできますし、書き損じハガキや古本などの不用品で寄付することもできます。少しずつの積み重ねで大きな支援に繋がります。


平出さんのお話をお聞きして、私たち全員が「平和とは何か?」について考えるきっかけをいただいて、改めて知ったこと。それは、「関心を持つことの大切さ」です。難しいトピックであるがゆえに、家族や友人、同僚と話す機会は少ないかもしれません。でも、こうやって、時間を作り、語り合い、考えること、そして関心を持ち続けること。それが、平和へ向けて私たちができる小さな一歩なのかもしれません。

KEENはこれからも、自分たちのできることを1つ1つ、続けて行きたいと思っています。

KEENシューズを受け取った難民の子どもたち

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