山を生きる身体と、見せるための感覚。
その両方を持つ七海さんは、
山をただ登る場所としてではなく、
自分自身を整え、確かめる場所として捉えています。
自然とともにある時間の中で磨かれた感覚は、
モデルとしての佇まいにも重なり、
次の一歩を踏み出すための
静かな強さとして現れていきます。
帰る場所だった山が変わった日
七海さんにとって山は、特別な場所ではありません。登山ガイドである父のもとで育ち、幼い頃から山は生活の延長にありました。けれど、その距離の近さゆえに、当時は特別な感情を抱いていたわけではなかったといいます。
「本当に“裏が山”みたいな環境で暮らしていたので、近すぎて逆に、あまり必要性を感じていなかったんです。近所のお店にわざわざ行かない、みたいな感覚に近いかもしれません」
そんな山との関係が変わったのは、大学受験で思うようにいかなかった時期。気持ちが沈み込んでいた頃、父に誘われて訪れた雪山での体験が、大きな転機になります。
「志望校に落ちて、周りがどんどん決まっていく中で、結構最後まで残っていて。正直、かなりメンタルが落ちていたんです。そのときに『山行くか』って誘ってもらって、雪山に行って。上でカップラーメン食べて、凍った滝の近くでそり遊びをして。それまでずっと下を向いていたのが、“ちっぽけだな”って思えたんです。まだ頑張れるなって」その瞬間、山はただの風景ではなく、少し違って見え始めたといいます。
感覚を整え、世界をひらく
現在、七海さんにとって山は、自分自身をチューニングする場所になっています。
「東京にいると、いろんな刺激とか、人の感情とか、結構受け取ってしまうタイプで。気づいたら疲れていることも多いんですけど、山に行くと、“自分って何が好きだったっけ”っていう、自分基準に戻れる感じがあるんです」
誰かと会話しながら浄化されることもあれば、同じグループの中であえて距離を取り、一人の時間のように歩くこともあるといいます。
「話しながら吐き出して、きれいな空気を入れていく感じもあるし、ちょっと離れて歩く時間でクリアになることもあります」
モデルと登山ガイド。ふたつの顔を持ちながらも、七海さん自身は明確なスイッチを設けていません。
「どちらも、等身大の自分でやっている感覚なんです」
ガイドとしても、知識を一方的に伝えるのではなく、感覚を共有することを大切にしています。
「『この花はこうです』って説明するより、『私はこう見えるけど、どう?』って聞くことが多いです。山の楽しみ方って、正解がひとつじゃないと思うので」
実際に山の中では、細やかな変化に目を向けています。
「今日も、芽吹き始めている木もあれば、倒れている木もあって。でもその倒木も無駄なものがなくて、ちゃんと次の命の栄養になっていく。全部が巡りの中にあるなって思うんです」
身体が整うと、景色が変わる
その感覚は、モデルとしての佇まいにも通じています。
「山では、無理をするとすぐにわかるんです。だからこそ、余計なことをしないというか、自分にとって自然な状態でいることを大事にしています」
呼吸、重心、足の運び。どれも意識しすぎるのではなく、身体に任せています。
「つくるというより、馴染ませる感覚に近いかもしれません」
環境に対して無理なく立つ。その佇まいには、山で培われた感覚がそのまま現れています。
「夏はエネルギーが強くて、緑がすごくきれいだし、秋は次に向けて蓄えている感じがあって。冬は空気が澄んでいて、春はまた芽吹きがあって。同じ山でも、全く同じ景色ってないんですよね」
山との向き合い方にも、変化が表れてきています。
「前は“どこまで行けるか”を考えていたんですけど、今は“どう歩くか”のほうが大事になってきました」
身体が整うことで、景色の見え方も変わっていく。その変化が、山を歩き続ける理由のひとつなのかもしれません。
足元の安心が、次の一歩を決める
そうした身体の感覚を支えているのが、足元の存在です。
「グリップ力とか安定感はもちろんですけど、それ以上にストレスがないことが大事。長時間でも、どんな環境でも、気にせず歩けることが一番だと思います」
今回履いている『TARGHEE』は、すでに3足目。
「自分の足にすごく合っているんです。横幅が広い足なんですけど、締めつけがなくて、長く歩いてもストレスがない」
さらに、ブランドの背景にも納得感があるといいます。
「キーンのスタッフのみなさんと山に登る中で、行動食の持ち運びに工夫があったり、必ずマイボトルを持参していたり。会社全体で環境負荷を減らすことを、ちゃんと実践しているんだなと感じて。山に関わるものとして、すごく納得できたし、安心感がありました」
ブランドの姿勢が、フィールドでの行動に滲み出ている。その一致が、靴への信頼をより確かなものにしています。その安心感が余計な意識を手放し、山の細部へと視線をひらいていきます。
その先は、歩く中で見えてくる
今年はロングトレイルや海外の山への挑戦も視野に入れているといいます。「やったことがないことに挑戦したい。1週間歩くようなロングトレイルとか、海外の山にも行ってみたいです」
新しい一歩には不安も伴います。
「でも、やってみたからこそ出会える感情があると思うんです。うまくいくかどうかじゃなくて、その過程で何を感じるかが大事」
山はチューニングの場所であり、同時に挑戦の場所でもあります。
「東京だといろんな鎧を着ている感覚にとらわれるんですけど、山に行くとそれが剥がれていく感じがあって。圧倒的な自然の前だと、余計なものがなくなるんですよね」
だからこそ、また山へ向かう。七海さんにとっての次の一歩は、歩き続ける中で見えてくるのかもしれません。
七海 Nanami
モデル/登山ガイド。登山ガイドの父のもとで育ち、幼少期から登山に親しむ。現在は自身も登山ガイド資格を取得し、モデルとして活動しながらガイドも務める。自然の中で培った身体感覚を軸に、感覚を共有するようなスタイルで山と向き合っている。
TARGHEE EXP MID WP
ウォータープルーフ
重量:409g(24cm片足)
余計な意識を手放すための足元
独自開発の防水透湿素材「KEEN.DRY」を搭載し、水の侵入を防ぎながらムレを逃がす『TARGHEE EXP MID WP(ターギー イーエックスピー ミッド ウォータープルーフ)』。耐久性の高いナイロンアッパーと全方向対応型のラグパターンを採用したラバーアウトソールで、街からトレイルまで対応します。足元に余計なストレスを残さず歩ける設計に加え、落ち着いたカラーリングが装いにも自然に馴染む。日常も山も、気負わずに歩ける本作は、ミッドカット仕様なので山の初心者にもおすすめです。