人気シリーズ“ZIONIC”の新作が登場! フィット感が高まり、より軽快に履ける『ZIONIC NXT』の実力
人気シリーズ“ZIONIC”の新作が登場! フィット感が高まり、より軽快に履ける『ZIONIC NXT』の実力

人気シリーズ“ZIONIC”の新作が登場! フィット感が高まり、より軽快に履ける『ZIONIC NXT』の実力

トレイル上でスピーディに行動できるようにと、軽量性や柔軟性を追求した“ZIONIC(ザイオニック)”シリーズに今季から新顔が加わった。その名も『ZIONIC NXT』。“NXT”は“NEXT”の意味であり、それだけにより進化した機能性を見せてくれる一足だ。

 

2023年に発売開始された“ZIONIC”は、防水性のミッドカット(ZIONIC MID WP)とローカット(ZIONIC WP)、非防水性だが通気性に富むローカット(ZIONIC SPEED)と、3タイプで構成された新シリーズ。スピードハイキングにも対応する「ファスト&ライト」さがポイントで、僕はこのシリーズの軽量性や履き心地の良さ、そして下り道での滑りにくさに惚れこんでしまい、これまで長らく愛用してきた。

そんななか、2025年秋に登場したのが、このシリーズの新作『ZIONIC NXT』だ。ZIONIC NXTにはミッドカット(ZIONIC NXT MID WP)とローカット(ZIONIC NXT WP)があり、「WP(Water Proof)」という言葉が入っているように、どちらも防水性のモデルである。

いずれにしてもZIONIC NXTは「NXT=次」というだけあって、ZIONICのアップデートバージョンという位置づけだ。あの優れたシューズがさらに改良されているとしたら、その履き心地はいったいどんな具合になっているのだろうか?

人気モデルをアップデートした新作シューズの特徴
まずは『ZIONIC NXT MID WP』の特徴を外観からチェックしていきたい。

真横から見たZIONIC NXT MID WP。重量は片足380gだと軽量だ。

サイドから見ると、つま先はかなり反りあがっているものの、かかとはフラット。前方へ踏み出す際に蹴り出しやすく、着地時にミッドソールの弾力性を十分に生かせるような設計だ。重量は片足380gとやはり軽量で、従来のZIONIC NXTよりもわずか3gではあるが、軽量性を増している。

足首周りは厚みのあるクッション素材で覆われ、アッパーは通気性に富むメッシュ素材だ。傷みやすい箇所はコーティングして補強されている。

かかと周りでは黒い部分、メッシュ素材では淡い光沢があって色が濃い部分が補強箇所。

注目したいのは、つま先部分だ。先に述べたように僕はこれまでZIONICシリーズを愛用してきたが、使い続けているうちに、つま先部分にボリュームがありすぎるのではないかと感じ始めていた。言い換えれば少し緩い感じがしたのだ。しかし、ZIONIC NXTのフォルムはそれよりもつま先に丸みを帯びさせながらも、全体的にはいくぶんシェイプされている。これならば足先の余裕は残しつつ、フィット感が高まっていそうである。

丸みをもたせたつま先部分。弾力があるラバーで覆われ、怪我を防止する。

また、つま先のガード(トゥバンパー)はアップデート前のZIONICよりも少し厚く、なおかつ硬い。難路での安全性も進化させているようだ。

シューレースは甲から足首にかけての通し方が3パターンで変わり、足首部分はフックになっている。このフックは付属の平紐タイプのシューレースと相性が良く、簡単に引っかけられるだけではなく、滑りが良くてフィット感の調整もしやすい。

甲の部分のホールはいったん締め付けると緩みにくく、中間部分はシューレースの滑りがよい。

従来のZIONICのタンはフィット感が高いものの、かなり薄く、強く締めると人によっては足首に食い込むこともあったようだ。しかしZIONIC NXTのタンには厚みがあるクッション性素材が使われ、非常にしっかりとしている。これならば足首を優しく守ってくれそうだ。

タンは中央部分で縫製されて立体的に立ち上がり、フィット感をますます向上。

弾力性が高いミッドカットは、かかと部分ではとくに厚みを増し、衝撃吸収性に優れている。かといって柔らかすぎず、歩行中に弾み過ぎることはない。バランスがよく設計されているという印象だ。

ヒールの高さは34㎜。足を入れると、つま先に向かって12㎜ほど前傾する。

アウトソールのパターンは、ZIONICと変わらず。じつはこのアウトソールは前方へ非常に滑りにくいという特徴を持ち、それこそ僕がZIONIC最大の長所だと思っていた点だ。だからこそ、アウトソールに変更がないことは個人的には非常に喜ばしく、下り道での安定性はもはや保障されているといってよい。

楕円形のラグが全面的に並んだアウトソール。前方への推進力に優れている。

シューズ内部にはフットベッド(インソール)が収められている。キーンのトレイル向けシューズのラインアップのなかでは比較的薄手のタイプだ。

立体的でかかとの収まりがよいシューズの内側。吸汗性にも富んでいる。

しかし、立体的な形状でかかとにフィットし、体重をしっかりと支えてくれる。ミッドソールの弾力性とのコンビネーションで、着地時の衝撃は十分に和らぎそうであった。

過不足ないフィット感! 履きやすさのアップは間違いなし!
では、実際に足を入れてみよう。期待は高まるばかりだ。

シューレースは甲の左右に広がるように取り付けられ、フィット感の微調整がしやすい。

おお、なるほど! 先ほど述べたようにZIONIC NXTはこれまでのZIONICよりもボリュームを抑えた足型になっている。そのためにアッパーが足全体を包み込むような履き心地はいっそう強化されている。キーンのシューズは足幅が狭い人には余裕がありすぎてフィットしにくいことがあるようだが、このZIONIC NXTであればその心配は少ない。僕自身は狭くもなく、広くもない中くらいの足幅なのだが、以前のZIONICよりもこちらのほうがしっくりとくる。

この日は雨上がりで少し湿った地面。テストにはちょうどよいコンディションだった。

実際に歩いてみると、ZIONIC NXTのフィット感のよさがますます伝わってくる。全体的にソフトでしなやかな履き心地が得られ、足との一体感がさらに高まっているのがよくわかった。

屈曲性のよさも十分だ。スピードを上げるためにストライドを大きくして歩くと、どうしてもシューズが大きく曲がるが、それでもとくに違和感はない。シューズ内部へのかかとの収まりがよいため、蹴り出したときにかかとが浮き上がることもなく、つねにフィット感は保たれている。

大股で力強く地面を蹴って歩いてみると、ZIONIC NXTの屈曲性のよさも理解できる。

アウトソールのラグは心地よく地面に食い込んだ。蹴り出しやすさは相変わらずだ。

横向きに並んだアウトソールの突起が、軽やかな足さばきにつながる。

木の根の上でもグリップ力が発揮され、凹凸が多いトレイルでも安定している。

地面に張り出した木の根の上でも問題なし。雨で濡れているときでも滑りにくかった。

じつはテストの前、フットベッドが少々薄いこともあって、木の根や岩などで凹凸が多いトレイルを長時間歩いていると、足裏に疲れを感じるかもしれないと危惧していた。だが、それは杞憂に過ぎなかった。僕はこの日以外もZIONIC NXTを何度もテストしたが、テント泊装備のような重い荷物を丸一日背負って歩くような場合はいざ知らず、日帰り登山のようなときはまったく問題にならないのであった。

このときのテストに使用したのは、ミッドカットの『ZIONIC NXT MID WP』。それだけに足を守る力がローカットよりも強く、着地時に足が大きく傾いてしまっても、そうそう捻挫は起こさない。

足が外向けに倒れ込んでも、足首を包み込むアッパーの力で過度には曲がらないで済む。

足首の濃いネイビーの部分にクッション素材を重点的に配置。

こんなZIONIC NXT MID WPは以前のZIONIC MID WPよりも少しだけアッパーの丈が低い。つまり、足首の可動域が広いのだが、安定感は変わらず維持されている。足首周りに配置されている硬めのクッション材が効果的なようだ。

シューズの足首周りのフィット感は、登りでは少し緩く、下りでは少しきつめにするのがトレッキングの際のセオリーだ。いちばん上をフックにしたZIONIC NXTは締め具合の調整がしやすく、ほどけにくい平紐タイプのシューレースを組み合わせているのも便利な点である。

フィット感調整のためにシューレースをいったん緩め、再び締めなおす。

フックの滑りが良いので、シューレースの調整は容易だ。

従来のZIONICよりもタンに厚みを持たせたZIONIC NXTは、想像通りにシューレースが足首に食い込みにくい。これは明らかに改善された点で、足首に体重がかかりやすい下り坂でもストレスなく歩けるのは本当にありがたい。

岩の上でも確かなグリップ力と弾力性
岩が多い場所ではアウトソールのフリクションの良さも実感できた。

乾燥した岩場の登り。アウトソールの突起が滑りを抑える。

少々滑らかな岩の上でも横滑りは起こしにくい。

ZIONIC NXTのアウトソールは、岩や石の上の細かな凹凸をしっかりととらえてくれる。これはZIONICを履いていたときと同様の感想だ。母体となるシューズが持っていた長所がそのまま維持されており、すでにZIONICを愛用していた方でも安心だろう。

段差がある場所を下っているときもZIONIC NXTの安定感は変わらない。

アウトソールが滑りにくいこともあり、これくらいの段差は難なく下りていける。

体重がかかるとアウトソールとミッドソールが程よくつぶれ、衝撃が緩和される。

硬すぎず、柔らかすぎもしない理想的な弾力性によって衝撃が吸収され、足腰のダメージを起こしにくいのであった。

ただし、ZIONIC NXTのアウトソールにいくらかの弱点がないわけではない。湿った斜面に足を横向きに置いた場合、横向きに楕円形のパターンが並んだアウトソールは体重を支え切れず、スリップを起こす可能性があるのだ。

泥っぽい場所で横滑りしたときのイメージカット。注意して足を置けば避けられる。 

雨や朝露でトレイルが濡れているようなときや斜面をトラバースするように歩く際は、できるだけアウトソールが水平になるように足を置くように意識したい。それだけでスリップの恐れは格段に減り、ZIONIC NXTの快調さはキープできるだろう。

シューズ先端のガードは以前よりも強化され、つま先を岩にぶつけても衝撃は和らげられる。この点は従来のZIONIC以上だ。

ZIONIC NXTのつま先のガードはそれほど大きくないが、指先を守るには十分。

とはいえ、ZIONIC NXTは軽量性を売りにした柔らかめのハイキングシューズ。岩場ばかりが続くトレイルではもっと強靭なシューズのほうが安心ではある。

このときのテストは晴天だったが、忘れてはいけないのがZIONIC NXTの防水性と透湿性だ。このシューズには“Aero Waterproof”という新しいテクノロジーが採用され、高度な防水性をキープしたうえで、これまでの“KEEN.DRY”に比べてなんと4倍近い通気性を実現している。

思い切って沢の中へ。防水性のみならず、アッパーの撥水性も上々だった。

実際、長時間履いていてもシューズ内の蒸れはあまり感じられない。このときのテストは暑い真夏が中心だったが、それでも汗による湿り気が明らかに少ないのには驚いた。

もともとZIONIC NXTはスピードハイキングやファストハイキングをイメージしたシューズである。そこで僕は坂道を長々と駆け下りてみた。

まるでトレイルランニングのように疾走。

ZIONIC NXTは軽量ではあるが、一般的なトレイルランニングシューズほどではない。しかしその分だけ構造がしっかりとしており、不整地でのグリップ力が高い。とくに下り坂ではブレーキのような効果を発揮して、勢いがついてしまった体でもスリップしにくい。路面に応じてスピードの上げ下げがしやすいともいえ、自分のイメージ通りに行動しやすいのは大きな長所なのであった

ZIONIC NXTに見るミッドカットとローカットの履き分け

冒頭で紹介したように、ZIONIC NXTにはミッドカットとローカットが用意されている。ここではミッドカットを中心にテストをしたが、最後に少しだけローカットタイプの『ZIONIC NXT WP』もご覧いただきたい。

ZIONIC NXT WP。重量は片足335gで、ミッドカットよりも45gほど軽い。

ローカットタイプの特徴はアッパーのサイドが深く切れ込んでいること。足首の屈曲性を重視したデザインで、足先を左右に大きく曲げられる。


赤い部分には厚手のクッション性素材が配置され、ローカットなりに足首を保護。

そのほかはミッドカットと大きく変わる点はないが、アッパーの面積が減り、フックなどのパーツが省かれている分だけ、当然ながら軽量になっている。

履き心地の差を感じるために、左足はミッドカット、右足はローカットで。

基本的にはアッパーの丈が違うだけとはいえ、両足で履き分けてみると想像以上に歩行感は異なるものだ。

足さばきの良さでは、やはり足首の可動域が広いローカットに軍配が上がる。重量はミッドカットよりも両足で90gも軽いこともあり、長時間履いていても疲れにくいのは間違いない。

滑りやすいトレイルで体重をしっかりと支えてくれるのはローカットよりもミッドカット。

しかし、安定感ではミッドカットにかなわない。足首が過度に曲がることを防いでくれるので、とくに下り道での安定感は高く、捻挫を防止する力が高いのだ。傾斜がついた斜面や岩の上では足首にかかる負担をアッパーが支え、体が安定する。

岩の上に立ってみたときの状態。アッパーに体重を預けられるミッドカットのほうがバランスはとりやすい。

もしも両方のタイプを手に入れたら、僕ならばどう使い分けるか?

それなりの傾斜があり、岩や石もあるような場所では、当然ながらミッドカット。足首の保護力が高いこともあり、怪我の防止効果も期待できる。また、下り道ではシューズ内部で足が前方へずれることを防いでくれるため、ローカットほど指先への圧力がかかりにくいのも利点だ。ローカットよりも少々重くても、僕はミッドカットを中心に使うことになりそうである。

不整地では安定感が高いミッドカットが安心だ。

一方、ローカットに向いているのは緩やかなトレイルだ。捻挫の恐れが少ない場所では足さばきが良く軽やかに歩けるので、ローカットの出番が考えられる。また、ZIONIC NXTは通気性が高いシューズではあるが、アッパーの丈は低いほうがシューズ内部の蒸れはいっそう排出しやすい。だから、蒸し暑い真夏もローカットが活躍するに違いない。

ZIONICから進化したZIONIC NXT。履き心地はさすがの一言。

 

アップデートで“進化したスタンダード”が誕生!
2023年にZIONICシリーズが初登場したとき、僕はこれからのキーンのスタンダードになりうる逸品だと感じ、自分の山歩きの際にも出番が多かった。そのうえでアップデートされたZIONIC NXTを履いてみると、フィット感を中心に改善されてますます足なじみがよくなり、軽量で安定感が高いというメリットは維持されていることがよく理解できた。母体となるZIONICの良さを生かしたZIONIC NXTは、いわば“進化したスタンダード”という存在になり得るのかもしれない。

ZIONICシリーズの新顔『ZIONIC NXT』は日帰り登山から荷物の軽い小屋泊の山行まで、一足持っていれば大いに活躍してくれるだろう。今後は“NXT”の活躍の場が増えそうだ。

 


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takahashi shotaro

高橋庄太郎(アウトドアライター)

高校の山岳部で山を歩きはじめ、出版社勤務後にフリーランスのライターに。著書に『トレッキング実践学』『テント泊登山の基本テクニック』など。山雑誌やアウトドア系ウェブメディアでの執筆に加え、近年はイベントやテレビへの出演が多く、アウトドアギアのプロデュースも行っている。

Instagram @shotarotakahashi