大定番ハイキングブーツコレクションから
キーンを代表するトレッキング系シューズといえば、<ターギー(TARGHEE)コレクション>だ。 定番中の定番といえるターギーⅡを筆頭に、いわばファミリーのようにさまざまなモデルに展開しているなか、 最新作として登場したのが「ターギー エイペックス」シリーズ。 ミッドカットでも片足400gを優に下回る軽量性と安定を兼ね備える、機能的なシューズだ。
(目次)
・他のモデルとラストは変えずに「ファスト&ライト」へと進化
・安定感と軽量性を兼ね備えるための絶妙なバランス
・さすがターギーの新作。受け継がれる絶妙なフィット感
・フリクション十分なアウトソールや安全性を高めるディテールにも注目
・より軽快に、より通気性を重視する人には、ローカットタイプも
初代モデルが登場してから今年で20年になるターギーコレクション。 その輝かしいヒストリーを記念する最新モデルが「ターギー エイペックス」シリーズ(以下、ターギーAPEXシリーズ)だ。 ミッドカットの『ターギー エイペックス ミッド ウォータープルーフ』(以下、ターギー APEX MID WP)、 ローカットの『ターギー エイペックス ウォータープルーフ』(以下、ターギー APEX WP)で展開するが、 今回はミッドカットカットの防水モデル、『ターギー APEX MID WPを中心にご紹介していこう。
すっきりとしたフォルムが特徴の「ターギー APEX MID WP」
はじめにお伝えしたいのは、 現在販売されているターギーコレクションはどれも前足部にゆとりのある同じラスト(木型、靴型)を使っていることだ。 簡単にいえば、シューズ内部の形状を決定する型が同一ということで、 シューズ内に足を入れたときに足が包み込まれるフィット感は、ターギーコレクションすべて共通である。 アッパーは素材によって硬さなどが変わるため、 ラストが同じでも足入れ感がわずかに異なる可能性はあるが、大きな差はあり得ない。 だから、これまでにターギーシリーズのシューズを履いて快適だと感じていた方は、 このターギーエイペックスもきっと気に入るに違いないのだ。
しかし、ラストは同じだとしても、 ターギー APEXシリーズは他のターギーコレクションとどのように違っているのか?
他のモデルとラストは変えずに「ファスト&ライト」へと進化
「ターギー APEX」シリーズの最大の特徴を一言で言えば、「ファスト&ライト」。
ターギーコレクションのなかでも、軽量ですばやく歩けることを重視したモデルなのである。
ファストハイクやスピードハイクだけではなく、一般登山でも軽快に使える一足
その点は、 ターギーコレクションのなかでもっとも堅牢な造りでしっかりと歩ける 「ターギー Ⅳ ミッド ウォータープルーフ」(以下、ターギー Ⅳ MID WP) との違いを確認するとわかりやすい。
手前が『ターギーⅣ MID WP』で、奥が『ターギー APEX MID WP』
重量は、 ターギー APEX MID WPが27.0cmで片足371gに対し、 ターギーⅣ MID WPは、27.0cmで片足570g。 なんと199gもの差があるのだ。 軽量性重視の方向と、堅牢性重視の方向とで作り分けられ、 ある意味ではターギーコレクションのなかでも対極にある2モデルといえるかもしれない。
両者を比べると、
ボリュームがあるターギーⅣ MID WPに比べ、
ターギー APEX MID WPはかなり細身であることがわかる
シューズというものは、ただ軽ければいいというわけではない。 少々重くても堅牢なシューズは安全性が高く、岩場などでも安心して使える。 一方で、軽量で柔らかなシューズは安定性が少し下がるものの、軽快に歩けて疲れも少ない。 要するに、用途やトレイルに合わせて選ぶのがベターだ。
こちらはアウトソール。
いかにも軽量で軽快に歩けそうなターギー APEX MID WP(上)に対し、
ターギーⅣ MID WP(下)は難路に適した凹凸が細かなパターンを持っている
重い荷物を背負ってしっかりと歩きたい方はターギーⅣ MID WP、 低山の日帰りなどで軽やかに歩きたい方はターギー APEX MID WPなどと、 シューズの特徴に合わせた使い分けをしていただきたい。
安定感と軽量性を兼ね備えるための絶妙なバランス
では、ここから本格的にターギー APEX MID WPの話を進めていこう。
かかとの左右に張り出したミッドソールは体のブレを抑えつつ、歩行中の衝撃を受け止める
ターギー APEX MID WPを横から見るとわかるのは、 上部のアッパーはいかにも軽そうに見えるのに、 下部のミッドソール、アウトソールはしっかりとした造りになっていること。 ただ軽量にするのではなく、 地面に接する重要部分は華奢にならないように、 全体のバランスをうまく取っているという印象だ。
アウトソールはつま先の先端までラグが付き、
強く蹴って歩いても滑りにくい。
かかとは着地時に体が左右にぶれにくい平面的な形状だ
そして、 前方への体重移動がラクになるように、 つま先の形状は少し反りあがっている。 それに対し、 かかとはフラット気味で、 地面に足を付けたときに体重がうまく分散する形状だ。
ターギー APEX MID WPはモデル名に「ウォータープルーフ」と入っているだけに、防水性も高い。 シューズ内部にはKEEN独自開発の防水透湿素材 「KEEN.DRY(キーン・ドライ)」テクノロジーが使われ、 防水性とともに透湿性が高いのがうれしい点だ。
防水透湿性の要であるKEEN DRYは、
シューズのライニング(ソックス状の裏地)の下に使用されている
シューズ内部の底には黄色いフォーム材で作られたフットベッド(インソール)。
この働きでシューズのクッション性はいっそう増す
さすがターギーの新作。受け継がれる絶妙なフィット感
さて、足を入れてみてすぐに実感するのは、そのフィット感の良さだ。
ターギーコレクションはシューズ内部に比較的余裕を持たせたラストを採用しており、
ターギー APEX MID WPも窮屈ではないのに緩みもないという、過不足ないフィット感に仕上がっている。
もっとも、足の形状には人によって差があるので、
ターギーコレクションが合わない人は、
キーンの他のシューズを試してみるとよいだろう。
ターギーⅡ、ターギーⅣなどを履き続けてきた僕には、
ターギー APEX MID WPも“いつも”の履き心地であった
実際に歩いてみると、 ターギー APEX MID WPターギー APEX MID WPの軽量さがすぐにわかる。 ミッドカットなのだが、他のシューズでいえばローカットのような軽やかさなのだ。
起伏が緩やかな場所は、とくにスピーディに歩ける
地面が柔らかなトレイルでは、このシューズの屈曲性のよさがますます発揮される
平坦な場所では意識しなくても自然に歩行スピードがアップし、なんだか気持ちがいい。 足の動きに合わせてよく曲がるアウトソールはグリップ力も上々で、 無理に力を入れなくても体が前に進んでいく。
柔軟性が高いアウトソールは、地面をしっかりととらえてくれる
下り道でももちろんスピーディに歩ける。 このアウトソールは体が前に行き過ぎないようにする、 いわばブレーキのような力も十分に発揮し、滑りにくいのがいい。
急斜面ではどうしても体重が前方へ向かい、滑りそうになるのだが……
山中では登り道以上に歩きにくいのが下り道だ。 シューズ内で足がつま先方向にズレやすく、体が不安定になるからである。 しかし、ターギー APEX MID WPは、ズレが少ない。 まずはターギーコレクションの足型が良いからだが、 それに加えてミッドカットなので足首部分でもシューズ内でのズレを抑えられるのである。 さらにはターギー APEXシリーズならではのシューレースの使い方も大きな要因だ。
シューレースは緩みが少ない平紐タイプ。
しかも細くて薄いため、しっかりと締まる
適度な摩擦感で滑りを抑えるフックにより、
足首周りの緩みも抑えられている
十分な機能を果たしながら、 シューレースは薄く、フックは小ぶり。 こういう細かな点もシューズの軽量性に貢献している。
フリクション十分なアウトソールや安全性を高めるディテールにも注目
岩の上でのフリクション(摩擦力)も悪くない。
全体的にソフトなシューズなので難路が続く区間ではターギーⅣのようなタイプのほうが適してはいるが、
少々の岩場ならばターギー APEX MID WPでも十分である。
乾燥した岩の上では、アウトソールのグリップ力はまったく問題なし
アウトソールの凹凸にはエッジが立ち、これがブレーキ力を生んでいる
不整地では足を捻挫しやすいものだ。 その点、ミッドカットはローカットよりも安心である。 後述するが、ターギー APEX WPはローカットも選べるのだが、 足首に不安を感じている方は、やはりミッドカットを履いてほしい。
外側に足が曲がり、捻挫をしそうな状態を再現。
だが、ソフトなアッパーでも予想以上の保護力を発揮してくれる
足首周りは厚みのあるクッション性素材で保護。
たとえ岩に擦れても痛くない
軽量さを重視したターギー APEX MID WPは、 つま先を保護するトゥ・プロテクションは最低限の面積に抑えられている。 その代わり、 つま先は樹脂製のコーティングで覆われ、 耐久性をおろそかにしているわけではない。
トゥ・プロテクションはつま先先端のみだが、
木の根を蹴った程度ではまったく痛みを覚えない
かかとのクッション性も申し分なし。
見た目以上に着地時の安定感は高い
より軽快に、より通気性を重視する人には、ローカットタイプも
じつは僕がターギー APEX MID WPをテストしたのは、冬の沖縄の山の中。 南国といえども涼しい時期とはいえ、湿度はかなり高かった。 だが、1日中履いていてもシューズ内の濡れが少ないのには驚いた。 さすがは「KEEN.DRY」を採用したシューズだ。
とはいえ、 蒸し暑い時期に汗をかきやすい人や 気温が高い低山を中心に楽しんでいる人などは、 さらなる蒸れにくさを求めるかもしれない。 そんな方にはローカットという手もある。 足首部分のアッパーが省かれている分だけシューズ内部に空気が入りやすく、 透湿性に加えて良好な通気性が期待できるだろう。
冒頭で説明したように ターギー APEXシリーズにはローカットタイプの「ターギー APEX WP」も展開されている。
ローカットの「ターギー APEX WP」は27cm片足341g。
ミッドカットの「ターギー APEX MID WP」よりも30gほど軽い。
足首がサポートされていないので、 ミッドカットよりも少し注意深く歩いたほうがいいが、 さらに軽量で足さばきもよく、疲労軽減効果も期待できる。 シンプルなデザインは街履きにもよさそうだ。
アッパーの高さの差は3㎝程度。
「ターギー APEX WP」はローカットながら、
アキレス腱を守るように後部を少し高くしている
ミッドカットとローカット、どちらをチョイスするのかはその人次第とはいえ、 安定性と安全性ではミッドカット、 軽量性と通気性ではローカット。 迷った場合は、 捻挫などの可能性が少しでも減るように、 まずはミッドカットを選ぶとよいのではないだろうか。
山中で試した「ターギー APEX MID WP」はやはり軽量だった。
かろやかにスムーズに、心地よく山を楽しめるのは本当にありがたい
そんなわけで、 キーンの新顔「ターギー APEX MID WP」をテストした結果を見ていただいたが、 僕は完成度が高い一足だと感じた。 大定番のターギーⅡをもっとトレッキングに適したものに進化させつつ、 ターギーⅣよりも格段に軽い。 これまでのターギーコレクションを気に入って愛用していた人はいうまでもなく、 これから山歩きを始めてみたい人、 スピーディにトレイルを楽しみたい人など、 ぜひ一度は試してみてもらいたい。
【商品紹介】
ライター:高橋庄太郎(アウトドアライター)
高校の山岳部で山を歩きはじめ、出版社勤務後にフリーランスのライターに。著書に『トレッキング実践学』『テント泊登山の基本テクニック』など。山雑誌やアウトドア系ウェブメディアでの執筆に加え、近年はイベントやテレビへの出演が多く、アウトドアギアのプロデュースも行っている。
Instagram:@shotarotakahashi
