山の一日を、親子でもっと面白く。はじめての親子ハイキング
山の一日を、親子でもっと面白く。はじめての親子ハイキング

山の一日を、親子でもっと面白く。はじめての親子ハイキング

子どもと山を歩いてみたい。でも、どんな山を選べばいい? 何を持っていく? 靴はいつものスニーカーでも大丈夫? そんな親子ハイキング初心者の疑問を、8歳の息子と歩いた千葉県・鋸山を舞台に考えてみた。フェリーに乗って海を渡り、山は自分の足で登って、帰りはロープウェー。そんな一日を通して、親子ハイキングを楽しむ小さなコツを紹介する。


フリーランスの編集/ライター福瀧(ふくたき)智子と、宇宙大好きの息子・風生(ふうせい)8歳

夫婦揃ってアウトドア好きの我が家では、息子も幼いころから海へ山へと、あちこち連れ回されてきた。親が遊びたいだけ、と言われればまぁ否定はできない。
けれど、子どもを自然のなかで遊ばせることには、ちゃんと意味もある。舗装された平らな道とは違い、山では石をまたぎ、木の根を避け、滑りそうな場所では足の置き場を考える。刻々と変わる足元や周囲の状況に合わせて体を動かすことそのものが、子どものボディバランスを鍛え、「ここはどうやって登ろう?」と自分で考える機会にもなる。
とはいえ、最初から大人と同じ山を歩かせる必要はない。我が家も最初は近所の低山から。小学生になってからは、ロープウェーやゴンドラを使いつつ、登って楽しい山へも足を延ばすようになった。
ラクできるところはラクをする。けれど、自分の足で登るところはちゃんと残す。このくらいが、親子ハイキングを始めるにはちょうどいい。

今回向かったのは、千葉県・房総半島にある鋸山(のこぎりやま)。 鋸山の名の由来は、遠くから眺めた稜線が鋸の歯のようにギザギザして見えることかららしい。標高329mながら、山中に残る石切場跡の人工的な直線と、自然がつくった荒々しい山容が入り混じるのも、この山ならでは。以前からいい山だとは聞いていたが、写真を見るたびに「なんだこの世界は!」。ジブリ(ラピュタ)好きとしても、前から一度潜入してみたかった。


山だけじゃない。一日まるごと面白くする工夫


私たちは神奈川県・三浦半島の付け根にある海沿いの街に住んでいる。鋸山へ向かうなら、ぐるりと東京湾を回って車で行く方法もあるけれど、今回は久里浜から東京湾フェリーに車を乗せて海を渡ることにした。

船が岸を離れれば、それだけでちょっとした旅。「母さん、見てあれ!」「でっかいタンカーだねぇ!」。息子のテンションもうなぎ登り。デッキで海を眺めているうちに、鋸山のギザギザした稜線も近づいてくる。親子ハイキングでは、山だけを一日の目的にしないのも大事だ。

面白そうな一日のなかに、ハイキングも入っている。 そのくらいの誘い方のほうが、子どもも親も気楽にフィールドへ出られるのだ。

自分の荷物は、自分で持ってみる


山の話を始める前に、荷物に関して。

日帰りの親子ハイキングなら、親の荷物はだいたいこんな感じ。今回は26ℓのデイパックに、雨具や防寒着、水、行動食、ファーストエイドなど日帰り登山の基本装備を用意。重要なのは、親子ハイキングでは「予定どおりにいかない」前提で準備しておくこと。急にお腹がすいた、転んだ、寒い、もう歩きたくない。子どもという生き物は、こちらの行程表など一切読んでくれないからだ。

①26ℓのデイパック②強風に備えてウィンドシェル③レインウェア④真空ドリンクボトル(ストロータイプが便利)⑤行動食(ナッツ、バナナ、カロリーメイト)⑥日焼け止め⑦ウェットティッシュ等⑧⑨レッグカバーと高濃度の塩水スプレー(鋸山はヒルが出る場合がある)⑩ゴミ用の密閉袋⑪ファーストエイド⑫万一の際のヘッドランプ、モバイルバッテリー、保険証⑬小型財布。あとは季節に合わせ防寒具や温かい飲み物を足す。
次にこちらが息子の持ち物。自分の水筒や行動食、雨具など、無理なく背負える範囲のものはなるべく自分で持たせている。

①小型デイパック②トイカメラ③レインウェア④ウィンドシェル⑤気分転換アイテム(このときは本。本はまだ一度も読んでないものがお勧め。トランプでもシャボン玉でも、気分が変わるものなら何でもいい)⑥使い慣れた水筒⑦おやつ(500円まで)

親の荷物を軽くするため……でももちろんあるが、それだけではない。自分が使うものを自分で持ち、把握することも山での経験。準備も一緒にする。

子どものペースで、いざ鋸山へ!


今回は海抜ほぼゼロメートルの金谷から、自分たちの足で「東京湾を望む展望台」まで登るのがテーマ。金谷港の駐車場に車を残し、案内標識に従って15分ほど舗装路を歩いて車力道コースの登山口を目指す。

ちなみに、親子ハイキングのコースタイムはゆったりめに設定するのがベスト。子どもは面白そうなものを見つければ止まるし、突然お腹もすく。そして、どうでもよさそうな話を延々としてくる。

この日も登山口までの道中、息子のおしゃべりはノンストップ。こちらは相槌を打つのに忙しく、景色を楽しむ余裕などほとんどない。これぞ親子ハイキング。

そんな調子で車力道コースの入口に到着。登山道は鬱蒼とした森のなかへ続いている。ここから、いよいよ山歩きの始まりだ。


足元の安心は、親の余裕につながる

車力道コースは、かつて鋸山で切り出した「房州石」を麓まで運び下ろすために使われた道。切り出された240kgもの石を、なんと女性たちが荷車に積み、運び下ろしたという。石畳には今も荷車の轍が残り、当時の仕事の過酷さを想像しながら歩くだけでも面白い。

ただし、足元はなかなか侮れない。全体的に歩きやすい道ではあるが、石畳に土の道、大小の岩、木の根と、短い距離のなかでも路面は次々と変わる。森のなかには湿った場所も多く、苔むした石や濡れた岩は滑りやすい。こういう道に入ると、普段履きのスニーカーとハイキングシューズの違いが分かりやすくなる。

山で頼りになるのは、変化する路面を捉えるグリップ力と安定感。フィット感や防水性も、安心して歩くための大切な要素だ。

今回私が履いたのは、KEENを代表するハイキングブーツ「Targhee」の『 Targhee IV MID WP(ターギー フォー ミッド ウォータープルーフ) 』。495g(片足24cm)と軽く、足首まで覆うミッドカットながら履き心地は軽快で、つま先には適度なゆとりがあり、なおかつかかとはしっかりフィットする。

個人的な考えだが、いい靴は、履いていることを忘れる靴だと思っている。

重い、硬い、路面の凹凸が気になる……などを感じず、存在が消えて身体と一体になっているような靴。Targhee IVはまさにそんな一足だ。濡れた石畳やぬかるみでも足元に余計な神経を使わず、目の前を歩く子どもに集中できる。この「気にしなくていい」という安心感は、親にとって必携装備なのだ。

防水透湿素材「KEEN.DRY」を備え、水辺やぬかるみも歩くことに躊躇がない。ローカットに比べて履き口が高く、足首まわりまで包み込まれるミッドカットは、山歩きにまだ慣れていない人にも安心感がある。 左上)Targhee IVシリーズ一番の特徴である「KEEN RUGGED OUTSOLE」は、滑りにくいだけでなく、すり減りにくい素材を採用。右上)かかとが収まるところに気持ちよく収まり、フィット感のよいヒール。左下)つま先は広めに設計され、足幅の広い人でも足入れにゆとりがある。右下/履き口とタンにクッション素材が使われ、登り下りでも足当たりが柔らかい。

息子は歩き始めたころからKEENヘビーユーザー。ハイキングから磯遊び、フジロック、スキー旅行まで、気づけば年がら年中履いている。息子が履いたのは、軽量トレイルブーツのキッズバージョン『 Hightrail MID WP(ハイトレイル ミッド ウォータープルーフ) 』。

では、子どもにもハイキングシューズは必要なのか。
答えは「Yes」。整備された遊歩道ならスニーカーでも十分だが、山では土や岩、木の根、濡れた路面と足元が次々に変わる。しかも子どもは、水たまりには突入するし、岩があれば登るし、下りでは突然走り出す。頼んでもいないのに、勝手に靴の性能を試し始めるのである。
だから山では、フィールド用の靴を選びたい。いや、結論として選ばないという選択肢はない!

今回息子が履いたのは『Hightrail MID WP(ハイトレイル ミッド ウォータープルーフ)」。鋸山のように、石畳や岩、土の道が入り混じるフィールドにど真ん中のモデル。
左上/普段履きのスニーカーとの比較。ミッドカットは足首をしっかりと支え、山歩きに慣れていない子どもの一足目にも心強い。右上/違いが分かりやすいのが靴底。ハイキングシューズは深く立体的な凹凸をもち、土や岩など変化する路面をしっかり捉る。左下/岩や木の根が続く山道では、「ここに足を置けば大丈夫」と思えることが大切。右下/引っ張って締めるストラップを採用。子ども自身でフィット調整しやすいのはラクでいい。
「もう登るの飽きた〜」が出たら「子ども隊長作戦」発動! 地図を渡して先頭を任せ、「よっ、さすが隊長!」「よく分かってらっしゃる!」と褒めちぎる。思ってなくても言う。すると不思議と足取りも軽くなる。 子どもは視界に入るものすべてが気になり、「休憩しよう」と言ってもなぜか休まない。そこで地図や虫眼鏡、カメラの出番。身体を休ませたいなら、興味のほうを足止めする。これも親子ハイキングの小ワザ。 「Targhee IVシリーズ」の履き心地は軽くソフト。それでいて岩や土など路面が変わっても、足を置いたところでしっかり踏ん張れる。この軽快さと安定感のバランスがTarghee IVの魅力だと思っている。


ちょっと頑張った先にあるもの


歩き始めて約2時間、最後は急な階段を登り切り「東京湾を望む展望台」に到着! 目の前には東京湾が大きく広がり、対岸には三浦半島まで望める大展望が待っていた。

山麓から鋸山ロープウェーで上がってくる観光客が圧倒的に多いが、この展望台までやってくる人はぐっと少なくなる。ここへ来るには、石畳や岩、泥のある登山道を自分の足で歩かなければならないからだ。

親子ハイキングでは無理をさせないことが大前提。でも、「ちょっと頑張ればできそう」くらいの負荷は残しておきたいとも思っている。疲れたけれど最後まで歩けた。自分の荷物を背負えた。登った先ですごい景色が見られた。そんな小さな成功体験が、「自分でできた」という自信や、次もやってみようという気持ちにつながるからだ。

その「ちょっと」は年齢や体力、その日の調子によって違う。頑張らせることと、無理をさせることは別物なのだ。

鋸山は山中にかつての石切場があちこちに残り、岩壁には人の手で切り出された垂直と水平のラインが刻まれている。この異様な風景は圧倒される。
 頃合いを見計らってトイカメラを投入。夢中で被写体を探しているうちに、本人も気づかぬまま小休止。これも体力温存作戦のひとつ。 こちらは観光ルートとしての人気の地獄のぞき。登りにロープウェーを利用する場合は、ハイカーならさらに足を延ばして「東京湾の見える展望台」までぜひ行ってみてほしい! 金谷港のフェリー乗り場を見下ろす。海抜ゼロから標高329mへ、足で登った高さが明快で清々しいハイキングだ。

十分に歩いて、見て、遊んだら、下山は鋸山ロープウェーでひとっ飛び。登ったんだから下りも自力で、なんて律儀に考えなくていい。親子ハイキングでは、ロープウェーやゴンドラなど使えるものは積極的に使って、体力にも時間にも余白を残しておきたい。

親子ハイキングに慣れないうちは、登山者や観光客がある程度いて、ロープウェーなどの施設も整った人気の山を選ぶのが安心。静かな山奥にはその魅力があるけれど、それはもう少し慣れてからでも遅くない。

なお、歩くフィールドやスタイルによって、シューズの選択肢も変わる。

整備された道が中心の軽快なハイキングなら、足首の自由度が高いTarghee IVのローカットも選択肢に。さらに軽さや俊敏な動きに対応するシューズを求めるなら、Targhee IVより軽く、柔らかなソールを採用した『 Targhee Apex(ターギー エイペックス )シリーズ 』もおすすめだ。行き先や歩く距離に合わせて、自分にちょうどいい一足を選びたい。

(左から)『Targhee IV WP(ターギー フォー ウォータープルーフ)』『Targhee Apex WP(ターギー エイペックス ウォータープルーフ)』『Targhee Apex MID WP(ターギー エイペックス ミッド ウォータープルーフ)』。山に慣れた人なら、鋸山くらいの山行なら『Targhee Apex WP』がさらに軽快に歩けると思う。
下山後は、港から車で10分にある保田漁港の漁港直営食堂「ばんや」へ。近海で水揚げされた地魚だけを盛った海鮮丼は文句なしのおいしさ。山を歩いたあとの刺身と白飯、そりゃもう間違いないでしょ!

久里浜港から帰りの車で息子に「今日、なにが一番楽しかった?」と聞いてみた。すると間髪入れず、元気よく「フェリーとロープウェー!」。

なんでやねん。あんなに頑張って登った山はどこいったねん。と思いつつ、まあ親子ハイキングなんて、そんなものなのかもしれない。山を歩いたことも、船に乗ったことも、途中で見つけたものも、全部ひっくるめて一日の思い出なのだ。

こうして親子で山へ出かけることを繰り返すうちに、その記憶が息子のなかに少しずつ積もっていけばいいと思う。いつか大人になった彼が、ふと「山に行ってみようかな。昔、母さんと行ったみたいに」と思う日が来たら、それで十分だ。

そのとき、「足元だけはちゃんとしたものを選べ」という母の教えも、ついでに覚えていてくれたらとてもうれしい。


おまけ
次はどこへ行く? 親子で歩いてみたい山 4選

① 大山(標高1,252m)|神奈川県
ケーブルカーで阿夫利神社下社まで上がり、そこから標高1,252mの山頂へ。急な階段や岩のある登山道もあり、鋸山よりもう少し「山を登った!」という手応えを味わえる。山頂からは相模湾や富士山を望み、下社まで戻れば茶屋でひと休みする楽しみも。乗り物を使って行程を調整できるので、親子ハイクに慣れてきたころのステップアップにおすすめ。

② 入笠山(1,955m)|長野県
富士見パノラマリゾートのゴンドラで標高1,780mまで上がり、山頂までは片道約1時間。入笠湿原や花畑を抜けて歩く変化のあるコースで、山頂では八ヶ岳や富士山、南・中央・北アルプスまで望む360度の展望が待っている。歩行時間と達成感のバランスがよく、「自分の足で山頂まで登った!」という経験をさせたい親子の最初の一座におすすめ。

③ 安達太良山(1,700m)|福島県
安達太良山ロープウェイを使えば標高約1,350mから歩き始められ、山頂までは約1時間半。比較的短い行程ながら、森林帯から次第に視界が開け、山頂付近では東北らしい雄大な山岳風景を楽しめる。秋は山肌を染める紅葉も見事。乗り物の楽しさと「ちゃんと山頂まで登る」達成感の両方があり、少し山歩きに慣れてきた親子にもおすすめ。

④ くじゅう連山・坊ガツル|大分県
親子で一歩先の山旅に挑戦するなら、長者原から坊ガツル、法華院温泉山荘を目指すコースへ。タデ原湿原から森を抜けると、くじゅうの山々に囲まれた広大な坊ガツルが現れる。山頂を目指さなくても景色は十分にドラマチック。法華院温泉に泊まり、歩いてしか入れない山の中で温泉に入って一夜を過ごせば、「歩く+泊まる」という忘れられない親子の山旅になる。




【商品紹介】

Targheeコレクション

キッズ 登山靴・トレッキングシューズ



福瀧智子(フリーランスの編集ライター)

登山、バックカントリースノーボード、シーカヤックによる海旅、野外フェスまで、日本ならではの多様なフィールドを横断し、取材・編集・執筆を行なう。女性向けアウトドア雑誌『ランドネ』創刊編集長として関わり、新しい女性のアウトドアスタイルを提案。フジロックフェスティバルをはじめとする野外イベントの制作にも携わる。現在は子どもとともに山や海へとフィールドを広げながら、自然体験と暮らしの関係性をテーマに活動。京都出身、逗子在住。

Instagram:@tomoko.fukutaki